トレメンダス / TREMENDOUS
The Beginning
1993年 日本アカデミー賞協会特別賞を受賞。同年、自身初の絵画作品《トレメンダス》を世に放つ
黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦──日本映画界を牽引した名匠たちの作品に携わってきた島倉が、満を持して筆をとり、新たな表現の扉を開きました。
トレメンダス とてつもない美しさ 島倉仁
【 トレメンダス TREMENDOUS 】
“エーゲ海の白き宝石”と讃えられるギリシャのミコノス島。
眩いまでの純白と、限りなく澄んだ蒼。傾きゆく夕陽が深紅を添え、風景は静かに、しかし劇的にその相貌を変えてゆきます。
光と影、静寂と鼓動――そのすべてが、ひとつの画面に凝縮されていくのです。
作品タイトル《トレメンダス》には、「恐ろしいほどに素晴らしい」「畏怖すべき美の極致」といった意味が込められています。それは単なる賞賛ではなく、美という存在が持つ力、観る者の魂を揺さぶる“圧倒”の感覚に他なりません。
島倉はこの一作に、背景美術作家として培った感性と、絵画という新たな言語による表現とを重ね合わせ、時空を超える美の在りかを探りあてました。
【 ドラフト 】
制作にあたっては、丹念な取材を重ね、幾度となく構想を練り上げながらドラフトを描き進めました。
アクリル、クレパス、色鉛筆──それぞれの素材が持つ特性を巧みに活かしつつ、画面に静かに立ち上がるイメージを丁寧に形づくっていきました。
思索と試行を繰り返しながら、感性と技術が交錯する創造のプロセスが、作品の奥行きを支えています。
【 トレメンダス部分 】
夕暮れの海に浮かぶ小舟たち、白く輝く
家々の灯りが、煌きながら静かに夜を迎えています。実景を超えた「理想の港町」。観る者を物語の中へと優しく誘います。
空は深い紫と紅に染まり、絵具を何層にも重ねてグラデーションを作っています。
海面は鏡のように光を受け止め、静かにゆらめいています。
装飾を排した直線的な造形が特徴の白壁の家々。「日常と静けさ」「穏やかな営み」にフォーカスした一角です。
【 島倉仁 SHIMAKURA JIN 】
1940年
新潟県生まれ。10代で新潟県美術展に入選し、その後、文部大臣賞、郵政大臣賞を受賞。1960年、版画の研鑽を積む傍ら上京し、東宝(株)に入社。黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦といった名匠監督作品に参加。また「ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなどにおいて描かれる空や雲の表現は、島倉の手によるものである。1981年に東宝を退社し、アトリエを主宰。映画やCM作品の制作に加え、全国の博物館から内装壁画の制作依頼を受けるなど、その活躍は多岐にわたる。テレビやラジオなどのメディアにも数多く取り上げられ、「空の島倉、雲の島倉」としてその名を不動のものとする。1993年には黒澤明監督の映画【
まあだだよ 】における夕景作品が高く評価され、日本アカデミー賞協会特別賞を受賞。同年、自身初の作品【トレメンダス】を発表し、横浜インターコンチネンタルホテルにて初の原画展を開催。以後、全国各地にて展覧会を重ね、芸術家としての歩みを確かなものとしている。
トレメンダス / TREMENDOUS
島倉仁 / SHIMAKURA JIN
80号変形(約1040 x 1470 ㎜)
1993年制作
The Beginning
acrylic gouache and acrylic on board
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トレメンダス / TREMENDOUS