ファイナル サンセット / FINAL SUNSET
1993年 日本アカデミー賞協会特別賞を受賞。同年、自身初の絵画作品《トレメンダス》を世に放つ
黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦──日本映画界を牽引した名匠たちの作品に携わってきた島倉が、満を持して筆をとり、新たな表現の扉を開きました。その後、初期4部作第3作目として 【ファイナル サンセット / FINAL SUNSET】を発表
ファイナル サンセット 夕陽が見ていた風景 島倉仁
【 ファイナル サンセット 】
紺碧の海と白砂のビーチ、そして限りない空のグラデーションが織りなすメキシコ・カンクンの黄昏。この作品は、日常から解き放たれたような静謐の時間を切り取った一枚です。
太陽が西へ傾くにつれ、空は赤から紫、そして深い青へとゆっくりと変化し、海面には金色の光の道が現れます。遠く水平線に沈む夕陽は、まるで時間の終わりと始まりを告げるかのよう。手前に広がるゴルフ場やリゾート施設の穏やかな灯りが、人と自然の共存をやさしく語りかけます。
島倉作品の代表的夕景。
ここでの「FINAL」とは、「最後の→最高の・究極の」という表現。
【 ドラフト 】
制作にあたっては、丹念な取材を重ね、幾度となく構想を練り上げながらドラフトを描き進めました。
アクリル、クレパス、色鉛筆──それぞれの素材が持つ特性を巧みに活かしつつ、画面に静かに立ち上がるイメージを丁寧に形づくっていきました。
思索と試行を繰り返しながら、感性と技術が交錯する創造のプロセスが、作品の奥行きを支えています。
【 ファイナル サンセット部分 】
劇的な空の表情と夕日。
燃えるような赤とオレンジに染まった夕焼け空と、まばゆい光を放つ太陽。
空に浮かぶ雲はシルエットとなり、一日の終わりの荘厳さと美しさを表現しています。
海岸沿いに立ち並ぶ家々と砂浜。家々の窓には灯りが点き始め、穏やかな時間が流れている様子が伺えます。
夕暮れ時の落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
夕日が反射してまばゆく輝く水面。燃えるようなオレンジ色から金色へと変化する光が、波の動きに合わせて細かく、そして力強く描かれています。光の筋は、まるで水面に黄金の道が敷かれているかのようで、見る者を作品の世界へと引き込みます。
【 島倉仁 SHIMAKURA JIN 】
1940年
新潟県生まれ。10代で新潟県美術展に入選し、その後、文部大臣賞、郵政大臣賞を受賞。1960年、版画の研鑽を積む傍ら上京し、東宝(株)に入社。黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦といった名匠監督作品に参加。また「ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなどにおいて描かれる空や雲の表現は、島倉の手によるものである。1981年に東宝を退社し、アトリエを主宰。映画やCM作品の制作に加え、全国の博物館から内装壁画の制作依頼を受けるなど、その活躍は多岐にわたる。テレビやラジオなどのメディアにも数多く取り上げられ、「空の島倉、雲の島倉」としてその名を不動のものとする。1993年には黒澤明監督の映画【
まあだだよ 】における夕景作品が高く評価され、日本アカデミー賞協会特別賞を受賞。同年、自身初の作品【トレメンダス】を発表し、横浜インターコンチネンタルホテルにて初の原画展を開催。以後、全国各地にて展覧会を重ね、芸術家としての歩みを確かなものとしている。
ファイナル サンセット / FINAL SUNSET
島倉仁 / SHIMAKURA JIN
80号変形(約1040x 1470 ㎜)
1993年制作
Third painting
acrylic gouache and acrylic on board
ファイナル サンセット / FINAL SUNSET