島倉 仁 SHIMAKURA Jin
1940年 新潟県生まれ。中学生の頃より頭角を現し、新潟県美術展に入選。続けて文部大臣賞、郵政大臣賞を相次いで受賞。早くからその才能が注目される。1960年、版画の研鑽を積む傍ら上京し、東宝株式会社に入社。以後、黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦といった日本映画界を代表する巨匠たちの作品に参画し、比類なき映像美術を築き上げる。
1981年、東宝を退社し、アトリエを設立。映画・CM制作のほか、全国の博物館より内装壁画の制作依頼を受けるなど、活動の幅を広げる。マスメディアにも取り上げられ、「空の島倉、雲の島倉」と称されるその名声は不動のものとなる。
1993年、映画『まあだだよ』(黒澤明監督)の夕景美術により、「日本アカデミー賞協会特別賞」を受賞。同年、自身初となる絵画作品『トレメンダス』を発表。日本映画界を牽引した名匠たちの作品に携わってきた島倉が、満を持して筆をとり、新たな表現の扉を開いた。横浜インターコンチネンタルホテルにて初の原画展を開催後、東京、名古屋、大阪、福岡など全国で展覧会を重ねる。
「空を描かせたら右に出る者はいない」と評される島倉の風景は、写実を超えて心象にまで迫る深みを持つ。その空は、大林宣彦監督に「島倉さんの雲は汗をかいている」と讃えられ、黒澤明監督からは「これだ!ありがとう」と絶賛された。『まあだだよ』のエンディングを飾った夕景は、背景美術の枠を超え、芸術として昇華された。
第1作『トレメンダス*』をはじめとする原画第1弾4部作は大きな反響を呼び、版画作品をはじめ、ジグソーパズル(4社より)、ポストカードなど多くの関連商品が展開された。その後も創作の幅を広げ、新潟県福隆寺には襖絵を奉納。仏教伝来をテーマとした壮大な風景は、訪れる人々に深い感動を与えている。(4部作:トレメンダス・モンサンミッシェル・ファイナルサンセット・ゲットアットニューヨーク)
また、岡本喜八監督、市川崑監督のお別れのセレモニーでは背景装飾を手がけ、とくに岡本監督は「島倉さんの作品で送ってくれ」と遺言を残されたという。
1996年、NHKスペシャル『生命』にて国際エミー賞受賞。2005年、文化庁映画祭にて文化庁映画功労賞、2008年には倉林誠一郎記念賞を受賞。さらに2015年、「60年にわたり背景美術の第一人者として活躍し、特に雲の描写において比類なき表現力を発揮した」ことが高く評価され、第5回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞を受賞。
「空の画家」としてNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』、TBS『ニュース23』、テレビ朝日『報道ステーション』などでも特集が組まれ、広く一般にも知られる存在となる。
近年では、「ゴジラシリーズ」や「ウルトラマンシリーズ」などに登場する空や雲がすべて島倉の手によるものであることが認知されはじめ、文藝春秋、週刊文春、神奈川新聞、tvk(テレビ神奈川)など各種メディアにも取り上げられる。2021年秋には日本テレビのドキュメンタリー『有吉×怪物』に出演。「黒澤明から庵野秀明まで、大物監督がこぞって依頼する“映画界の怪物”」として紹介された。
自伝兼作品集『特撮の空』(ホビージャパン刊)も版を重ねており、出版面でも高い評価を受けている。
その画業のみならず、島倉仁の穏やかで誠実な人柄もまた、多くの人々に愛されている。*
現在までに発表されたオリジナル原画作品は200点を超え、その主題は空や雲にとどまらず、富士、桜、滝、海、炎など、自然の根源的な力を宿す風景へと広がっている。今なお、魂を込めた筆致で新たな作品を世に問うその姿勢は、芸術に捧げた人生の証であり、真の“描き手”としての誇りを感じさせる。
(島倉仁 公式・ジン シマクラ オフィシャル・shimakura jin official)
1993年に島倉はトレメンダスを含め4作品を描きました。
【 受賞歴 】
1993年 日本アカデミー賞協会特別賞 *
1993年 国際エミー賞
2005年 文化庁映画功労賞 *
2005年 映画の日 永年功労賞
2008年 倉林誠一郎記念賞 *
2015年 ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞 *