トレメンダス / TREMENDOUS
The Beginning
1993年── すべてが始まりました。
日本アカデミー賞協会特別賞を受賞したその年、島倉仁は、満を持して筆を執り、自身初の絵画作品《トレメンダス》を世に送り出しました。
それは突然の転身ではありません。
黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦── 日本映画界を牽引した巨匠たちの作品世界を、美術の力で支えてきた島倉。
ゴジラシリーズやウルトラマンシリーズに描かれた空や雲── 映画や特撮の数々の名場面に広がる壮大な風景には、“ 雲師 ” “ 空の島倉 ”と呼ばれた彼の手が宿っていました。長年、映画美術の最前線で培われた技と感性は、ついに「絵画」という新たな表現の扉を開きます。
《 トレメンダス 》は、その第一歩でした。
ここから、島倉仁の画業が始まりました。
そして、私たちの物語も── ここから始まったのです。
トレメンダス とてつもない美しさ 島倉仁
【 トレメンダス TREMENDOUS 】
“エーゲ海の白き宝石”と讃えられるギリシャのミコノス島。
眩いまでの純白と、限りなく澄んだ蒼。傾きゆく夕陽が深紅を添え、風景は静かに、しかし劇的にその相貌を変えてゆきます。
光と影、静寂と鼓動――そのすべてが、ひとつの画面に凝縮されていくのです。
島倉はこの一作に、背景美術作家として培った感性と、絵画という新たな言語による表現とを重ね合わせ、時空を超える美の在りかを探りあてました。
1993年に島倉はトレメンダスを含め4作品を描きました。
【 島倉仁 SHIMAKURA JIN 】
1940年
新潟県生まれ。10代で新潟県美術展に入選し、その後、文部大臣賞、郵政大臣賞を受賞。1960年、版画の研鑽を積む傍ら上京し、東宝(株)に入社。黒澤明、岡本喜八、伊丹十三、大林宣彦といった名匠監督作品に参加。また「ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなどにおいて描かれる空や雲の表現は、島倉の手によるものである。1981年に東宝を退社し、アトリエを主宰。映画やCM作品の制作に加え、全国の博物館から内装壁画の制作依頼を受けるなど、その活躍は多岐にわたる。テレビやラジオなどのメディアにも数多く取り上げられ、「空の島倉、雲の島倉」としてその名を不動のものとする。1993年には黒澤明監督の映画【
まあだだよ 】における夕景作品が高く評価され、日本アカデミー賞協会特別賞を受賞。同年、自身初の作品【トレメンダス】を発表し、横浜インターコンチネンタルホテルにて初の原画展を開催。以後、全国各地にて展覧会を重ね、芸術家としての歩みを確かなものとしている。
トレメンダス / TREMENDOUS
島倉仁 / SHIMAKURA JIN
80号変形(約1040 x 1470 ㎜)
1993年制作
The Beginning
acrylic gouache and acrylic on board
トレメンダス / TREMENDOUS